徒然草第六十六段 前編は、超偉い大臣と鷹飼のプロ職人によるドタバタな攻防!
「上司やクライアントからの無茶振り、プロとしてどう対応する!?」
大臣からの「こうしてほしい!」という注文に、プロの武勝がまさかのバッサリ対応。
偉い人相手でも、自分の知っているやり方は曲げない。
そんな武勝のブレなさが、なんともジワるお話です。
徒然草第六十六段(前編)の原文
たった一場面!大臣とプロ職人のリアルな攻防を見てみよう。
岡本関白殿、盛りなる紅梅の枝に鳥一雙を添へて、この枝に付けて参らすべきよし、御鷹飼下毛野武勝に仰せられたりけるに、花に鳥付くるすべ、知りさうらはず。一枝に二つ付くる事も、存じ候はずと申しければ、膳部に尋ねられ、人々に問はせ給ひて、また武勝に、さらば、おのれが思はむやうに付けて参らせよと仰せられたりければ、花もなき梅の枝に、一つをつけて参らせけり。
徒然草第六十六段(前編)の単語解説
まずは、今回の話を読むために、分かりにくい言葉だけサクッと確認しておきましょう。
- 岡本関白殿(おかもとかんぱくとの):藤原師通。当時の政治のトップ。
- 鳥一雙(とりいっそう):鳥が一対、つまり2羽。
- 御鷹飼(おたかい):鷹の飼育や狩りを専門とする職人。
- 下毛野武勝(しもつけののたけかつ):鷹飼のプロ職人の名前。
- 膳部(ぜんぶ):料理や配膳を担当する役人・部署。
徒然草第六十六段(前編)のエモ語訳

それでは、大臣の注文にプロ職人がどう返したのか、今の言葉で見てみましょう。
大臣「紅梅に鳥を2羽つけて!」
大臣(関白殿)が、鷹飼のプロ・武勝に注文します。
「満開の紅梅の枝に、鳥を2羽つけて持ってきて!」…という感じの、なかなか華やかなご注文。
ところが、武勝はここでまさかのストップ。
花が咲いている梅の枝に鳥をつけるやり方なんて知らないし、そもそも1本の枝に2羽つけるなんてことも知らない。
つまり、
「いや、それ、私の知ってるやり方じゃないです。」
と、大臣相手に普通に断ったわけです。
大臣も「え、そうなの?」となったのか、料理方や周りの人たちにも確認。
そして結局、
「じゃあ、あなたが思うようにやって持ってきなさい」
ということになりました。
すると武勝が持ってきたのはー
花のない梅の枝に、鳥が1羽。
……いや、そこまで自分のやり方を貫く!?
大臣の「華やかにしてほしい」という注文、どこ行った。
徒然草第六十六段(前編)、言いたかったこと

大臣の注文より、自分の知っているやり方を優先した武勝。そのブレなさが、この話の面白いところです。
武勝は、偉い大臣に言われたからといって、知らないやり方を無理にやろうとはしません。
しかも「自分の思うように」と言われたら、本当に自分の思うようにやる。
花なし。鳥1羽。
…潔すぎる。
兼好さんは、そんな武勝の姿を「頑固な職人」として説教くさく語るのではなく、「こういう人、いるよね」と面白がって見ている感じがします。
私ならこう思う

偉い人の無茶振りをバッサリ切る職人、ちょっと憧れちゃうよね。
超VIPの大臣に向かって、
「そのやり方、知りません。」
って言える武勝、なかなか強い。
しかも「じゃあ自分の思うようにやって」と言われた結果が、花のない梅+鳥1羽。
いや、自由すぎる。
現代で言えば、「クライアントから『もっと豪華で映える感じにして!』と言われたけど、自分の専門外だからと断って、最終的にめちゃくちゃシンプルなデザインで納品した」みたいな感じかな。
もちろん、現代の仕事ならそれで済まないこともあるけど。
それでも、「知らないものは知らない」「自分の分かることをやる」っていう、このブレなさはちょっとカッコいい。
700年前にも、こういう「いや、私はそういうの知らないんで」と言える人がいたんだなぁ。
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